紅ずきん



なんとか走り抜け、家に入った。


「うわあっ!あ、アリス!あれ?その人は…?」

「エリナ先輩。」

エリナ先輩は雪兎を不思議そうな顔で見ていた。

「雪兎…。なんで?なんで私を連れてきたの?」

「エリナ、君も戻るんだ。生きて。」

「嫌よ!もう現実になんて戻らない。私はこの場所で死ぬの!」

「エリナ…。君はもう、独りじゃないんだ。皆がいるんだ。アリスや悠太、そして僕もいる。」

「私が生きていたら、皆に迷惑がかかる。だから、私は死ぬの。皆のためなの。」

「違う。それは僕たちのためなんかじゃない。自分の都合のいいように解釈しているだけだ!」

「もう何も言わないで!死ねなく…なるじゃない…。」



私はエリナ先輩の言葉を聞き逃さなかった。

「エリナ先輩、本当は死にたくないんじゃ…。」


エリナ先輩はただ泣いた。


なんの涙かはわからない。でも、泣いていた。


「エリナ…。僕ね、エリナが好きなんだ。だから、死なせたくなかったんだ…。」

「ゆ…きと…?」

「でも、辛いんだったら仕方ないや。ごめんね急に。でも、最期に言えてよかった。」

「うぅぅ…。ひどぃょ…。なんで今なのょ…。」


エリナ先輩は泣きながらそう言うと、雪兎に抱きついた。

雪兎はすごく驚いているようだった。


「エリナ…?」

「ありがとう。私も雪兎、好きだよ。でも、さよならだね。」


私は雪兎に言って時計を見させてもらった。

タイムリミットはあと5分。


外は太陽が沈みそうだった。
闇が訪れれば、この世界が消滅する。

今生まれた愛も消滅する。


すべて消滅する。


ハルには申し訳ないけど、私たちは頭巾を広げ、3人で入った。

ハルはよく現状を理解していないらしい。
なぜ私たちが頭巾に体を包んでいるのか。


エリナ先輩は泣いていた。
でも、笑顔だった。

いつもの明るい笑顔。


そして、残り一分となった。
太陽はもう、ほとんど沈み、地平線にオレンジ色が見えた。


カウントダウンが始まる。


59、58、57、56、55…


「皆、元気でね。」

54、53、52、51、50…


「皆に会えてよかった。幸せだった。今までの悲しみを忘れられた。」


49、48、47、46、45…


「私だって…!」

私はつい声をあげた。

44、43、42…

「エリナ先輩の笑顔を見ていると、私も元気をもらえた!」

41、40、39、38…

「エリナ先輩…。死なないで…。さよなら…したくないょ…。」

37、36、35、34、33、32…

「アリス…。ありがとう。」

31、30、29…


残り30秒を切ったときだった。

突然、雪兎が頭巾から出る。


「雪兎!なんで出るの!もう、30秒もないのよ!早く入って!」

「エリナと…いく…。」

「え…?」

「僕はエリナがいないのは嫌だ。」

「何を…言ってるの…?」


雪兎は私と悠太へ振り返った。
何も言わずに、儚い笑みを浮かべた。

雪兎は…死ぬ気だ…!


でも、なぜか私は止める気にならなかった。

あれは、雪兎が選んだ道。
私が無理矢理変えてはダメだ。

私も雪兎に笑顔で返した。

残り10秒。

9、8、7、6、5、4、3、2…


私は爆発する寸前に言った。











「また会おうね!」