紅ずきん



エリナ先輩の言葉を聞くと、女王は悲鳴をあげ、崩れ落ちた。


たかが空想の人物。
それでも、この世界では生きていた。

命があった。


でも、この世界も、女王も空想のモノ。
いずれ消えていく運命だった。


女王の気持ちもわからなくはなかった。
勝手な都合で死ぬ。消えていく。


これほど悲しいことはあるだろうか。


そのとき、エリナ先輩が私と雪兎のところへ歩いてきた。


「いい?聞いて。女王は助けることはできないけどね、アリスと雪兎、そして悠太くんは助けてあげる。私は、ここで消えるから。」

「なんでですか!せっかくエリナ先輩に会えたのに…。」

「大丈夫よ。現実の世界に戻れば、私のことなんて微塵も覚えていないわよ。だから、悲しくなんかないわ。」

「そんなんじゃないです!たとえ記憶に残らなくても、エリナ先輩には生きていてほしいんです!だから…」

「ごめんなさい。無理なの。私はどちらにしても死ぬわ。この呪いをかけたのは私で、呪いっていうのは、かけた人にもそっくりそのまま返ってくるの。だから、私はここで死ぬわ。アリス、ありがとう。」

「そんな…。嫌だ…。エリナ先輩…。」

「それじゃあ、今から助かる方法を教えるわ。方法は簡単よ。赤ずきんが被っている頭巾を広げて、皆でその頭巾で体を包み込むの。頭巾はいくらでも広がるから、3人ともちゃんと入るわ。世界が滅びる前に隠れてよ?そうじゃないと死んじゃうからね?大丈夫?」

「うん。」

「なあ、エリナ。一人で死ぬのか?」

「ええ。私は生涯独りなんだから。生まれてから死ぬまで。それが私の運命。雪兎、私に協力してくれてありがとう。もう、いいの。最期にいい人達に会えて良かった。私、幸せだったよ。」
「エリナ…。」

「エリナ先輩…。」

「それじゃあ、そろそろ時間だから。5時にはこの世界は爆発して消えるわ。私が今から頭巾を取ってくるから、それを持って、全力で走って家に戻ってよ。そして、3人で頭巾の中に入ってね。わかった?じゃあ、行くよ?」



そう言うと、エリナ先輩は走って赤ずきんのところへ行き、頭巾を奪った。

「はいっ!走って!」


頭巾を渡され、私はとっさにそれを受けとる。

すると、雪兎がエリナ先輩の手をつかんでいた。
そして、私に「走れ」と言い、エリナ先輩も連れて家に向かった。


背中にすごい殺気を感じた。

赤ずきんや女王の殺気を。