「僕がまだあの高校に通っていたときだった。





僕はよく図書館に行っていたんだ。
とくに旧校舎の図書館に。

そこで僕は初めてエリナに会う。
エリナは図書館の本をたくさん読んでいた。
読んでいた本はほとんどが呪いやおまじない関係の本だった。


僕は気になって、エリナに話しかけたんだ。


『君…、何を読んでいるんだ?』

『あ。…え…と…。』

『大丈夫だよ。僕は誰にも言ったりしないから。ただ気になっただけ。』

『私、呪いを作ろうと思っているの。』

『呪い?』

『誰にも話したりしないでよ。私、この世界からいなくなりたいの。』

『何を言ってるんだよ!』

『だから、呪いの力を使って、別世界を造り上げるの。そこで私は迷い込んだ人を道連れにして死ぬの。』

『え?死ぬって…。やめなよ!そんなことしないでも、生きていたらいいことあるよ!』

『何度もその言葉を聞いてきた。今度は私を騙したやつらが苦しむ姿を見て私が楽しむ番よ。』


エリナは狂っていた。
すでに手遅れだった。僕にはもう、何もできなかった。


だから、僕はエリナに呪いのことをたくさん教えてもらった。ただ教えてもらった。


そうしてついに呪いを成功させた。
エリナはすぐにはその世界には行かず、しばらく呪いにかかるやつを探しているようだった。


そして、ついに一人目の人が消えた。

それが始まりだった。


噂が広まり、いつしかこの学校で有名になった。


そんなとき、エリナはアリスに出会い、『友達』という存在を知ったんだ。


そしてある日、エリナは僕に相談してきた。

『ねえ、雪兎。アリスと幼馴染みなんでしょ?だったら、アリスがこの呪いの世界に行っても守れるようにして。お願い。』


それで僕は、『赤ずきん』の最後の2ページを破り、それを僕が買ったお守りの中に入れて二人に渡した。


そのあと、僕はこの世界に来た。


エリナはそのずっとあとにこの世界に来た。
つい最近だ。


きっとエリナはこの世界を自分ごと消滅させるために来たんだろう。


だから、あとはアリスと悠太を無事にもとの世界に戻せたら、僕の仕事も終わり。

アリスと悠太も僕との記憶を全て思い出すと思う。


でも、僕はその頃はもうこの世にいないと思う。
僕は、一人のエリナのために残る。

それが最期の仕事かな。」

「雪兎…。」


やっぱり、雪兎は犯人なんかじゃなかった。

そして、エリナ先輩も、決して悪い人じゃない。
少なくとも私にとっては。


「じゃあ、早くエリナ先輩を探さないと!」

「うん。でも、全くわからないんだ。」

「そんな…。」


私はため息をつきながら地面を見た。
すると、そこには猫がいた。


「ああ!!チェシャだ!」

私がそう叫ぶと、小さかった猫が人の姿へと変わった。


「ひっさしぶり~♪雪兎くんも♪」

「こ、今度は何?」

「お茶会のお誘い♪外に帽子屋が来てるよ♪」