私は昼食を作りにキッチンに向かった。
いつもと量が違う。
一人分少ない。
リビングでは皆それぞれで悩んでいた。
落ち込んでいるのかもしれない。
でも、暗い雰囲気に変わりはない。
私もどんよりした気分でご飯を作る。
こんなとき、ご飯だけが元気をくれる。
私は今日でどうせ最後のご飯だしと思い、残っていた昼食分の材料をほとんど全てを使い、パスタとスープを作った。
「お待たせ。これ食べて、一旦全てを忘れよう?ご飯のときくらい、明るく食べようよ。」
「うん。」
悠太がうなずく。
でも、表情は暗かった。
疲れたな…
もう、メチャクチャだよ…
私達、たぶんここで死んじゃうんだろうな…
もう無理だよ。
あと少しで1日が終わるっていうのに、また振り出しなんて…
私達は結局一言も喋らずにご飯を食べ終わった。
そのあと、皆、それぞれの部屋に戻っていった。
私も自分の部屋に戻ろうとしたけど、雪兎に呼び止められた。
「話があるって言ったよね。」
「あ、そっか…。」
私は雪兎の部屋に入った。
「で、話なんだけど…。この世界が今日、消滅するのは知っているよね?」
「うん。」
「それで、僕はさっき話した、ある人物に悠太とアリスを守るように頼まれたんだ。まあ、悠太とアリスが来なかったら、僕はそんなことをしなくてもすんだんだけど、これは運命だから。」
「運命…?」
「そう。『赤ずきん』の話に書かれている運命。必ずアリスはここに来るようになっていたんだ。それで僕は今日まで二人を赤ずきんと狼から守った。でも、二人をもとの世界に戻す方法がまだわからない。それで僕はある人物を探しているんだよ。」
「ある人物って誰なの?」
「本当は…、言ってはいけないけど…。言うなって言われたけど…。アリス、決してその人を嫌いにならないでよ。」
「うん。」
「エリナだよ。」
「エリナ先輩?!」
「うん。エリナが…。この話の作者なんだよ…。」
衝撃だった。
エリナ先輩が…。
私がこの噂話を知ったのも、もとはと言えば、エリナ先輩が教えてくれたからだ。
なんで…。
「全てを今から話すよ。よく聞いてね。」