紅ずきん



翌朝。


寝不足で顔色が最悪だった。


そういえば、何で私眠れなかったんだっけ?


思い出せないや。


そのとき。

チリン…


ん…?


私の制服のポケットから鈴のついたお守りが落ちた。


その瞬間思い出した。


ああ!
悠太!私、もう少しで忘れるところだった。


でも、思い出すことができたんだから、きっと悠太は無事だよね…。


私は悠太がいることを確かめたくて、急いで学校に向かった。


教室に入ると、いつもと何も変わってない。


「あ、アリスおはよう!」
「お、おはよう。」


私はバッグを置くと、すぐに悠太のクラスに向かった。


すると、さくらに会った。


「あ!さくら!悠太のこと覚えてる?」

「うん、もちろん!昨日あれだけ言われたんだもん!忘れるわけがないよ。」
「よかった…。」


私はほっとした。


さくらも忘れてなんかいなかった。


やっぱりあんな話、嘘に決まっている。


私はそう思えてきた。


そして、悠太のクラスの前にきた。


教室を見回したけど、悠太の姿はない。


まだ来ていないのかもしれない。


私はこのクラスの人に悠太を見たか聞くことにした。


だけど、私はそれで絶望を感じた。


「あ、あのー、悠太はいますか?」

「『ゆうた』って誰ですか?」

「え?このクラスにいるじゃないですか。」

「さあ。ごめん、わからない。」


そう言ってどこかに行ってしまった。


ま、まさか…


私は色んな人に聞いて回った。


すると、悠太の姿を見た人どころか、悠太を覚えている人すらいなかった。


悠太の仮説が当たった。


最悪な仮説が。


私は怖くてさくらのもとへ行った。


「さくら、さくら!誰も悠太を知っている人がいないの!」

「え…?アリス、『ゆうた』って誰?」

「え…?さくら…?さっき、覚えてるって…。」


嘘だ…。
嘘だって言って…。


さくらまで忘れたら、私はどうすればいいの?


「さくら、冗談はよしてよ。昨日の帰りに話したじゃん。私の彼氏だよ!」

「え?アリスいつのまに彼氏できたの?」


さくらの話し方は、本当に知らないようだった。


嘘…。
嫌だ…。


じゃあ、悠太は…。


私は旧校舎へと走った。