紅ずきん



「ただいま。」

「うわあっ!あ、アリス?!その服は…?」


家に入ると、悠太が私の格好に驚いた。


「なんか…、突然魔法みたいなもので、服を変えられたの。」

「そ、そうか…。それより、女王と何の話をしてきたんだ?」

「え、え…と…。」



雪兎のことは、言うべきなのだろうか。

皆も確かに雪兎を疑ってはいる。でも、雪兎にだけに内緒で、雪兎を責めるのは、可愛そうな気がした。


「た、ただ、この世界がどんな世界かだとか、『赤ずきん』の問題とかを話し合っただけよ。でも、解決はしなかったんだけどね…」

「そうか…。」


少し残念そうに悠太が言った。


本当は雪兎を調べることを頼まれたのだが、皆には迷惑をかけたくなかった。


私は女王からもらった、鏡をそっと取り出した。

見た目はごく普通の鏡だ。悠太に見られても、ただの鏡と言えば大丈夫だ。


私は試しに、私の部屋を覗いて見た。


「私の部屋を映してください…?」


どう言えばいいかわからなかったけど、とりあえず願うような形で言ってみた。


すると、ちゃんと私の部屋が映し出された。
もちろん、誰もいないけど。


ふと、私はあることを思い付いた。
魔法の鏡なら、この世界じゃない場所も見れるのではないか。

つまり、現実の世界をみることはできないのかと私は思った。


私は鏡に、「現実の世界の学校を見せてください。」と頼んだ。


すると、鏡はちゃんと、学校の中を映し出した。


私のクラスだった。


私の席には誰も座っていなかった。
授業中で、皆黒板を真剣に見ていた。


なかには、手紙などを書いて回したり、ノートにらくがきをしている人もいた。


その光景が、とても懐かしく感じた。



皆にまた会いたい…



私は休み時間になるまでしばらく待った。


そして、鐘が鳴り、皆教室を出ていった。


だけど、その中に一人だけ、ケータイを取り出し、何かを調べだした人がいた。



さくらだった。



「さくら…!」


私は鏡ごしでつい呼んでしまった。
だけど、さくらは誰かに呼ばれたかのように、振り返ったり、回りを見渡していた。


まさか…


「さくら。聞こえる?私、アリスよ!聞こえたら、後ろを見て。」


すると、さくらは後ろを見た。


何やら口をパクパクしている。
だけど、向こう側の声はこっちには聞こえない。


「ごめんね。声は聞き取れないの。あ。黒板に大きく文字を書いて!」


すると、さくらは黒板に向かい、白いチョークで大きく文字を書いた。


『アリス 大丈夫なの?』

「ええ。私は大丈夫。頑張れば、皆でもとの世界に帰れるかもしれない。」


『よかった 皆アリスのこと覚えていないの』


「やっぱり…か…。」


『でも私は忘れなかったよ!』

「ありがとう。さくらが忘れなかっただけで、私は救われる。」

「アリス、さっきから誰と話しているんだ?」

「ひゃぁ!え?わ、私は何もしてないよ…?」

「鏡をずっと見つめながら何か言って…」

「ああ。独り言よ。肌があれてるなぁ。なんて…。はは。」

「ふーん。」

「あ、わ、私、部屋に行くね。」


私は逃げるように部屋に入った。