あぁーー


やっぱりあたしはとんでもない悪役でマヌケ女だ。




「ふっ・・・うっ・・・」



長くて綺麗な指が、そっとあたしの頬を撫でる。




やめて。
やめて。
そんなに優しく指を滑らせないで。



そんなに苦しげに、切なげに・・・愛おしげに、あたしを見ないで。





じゃないと、あたし、あたしっ・・・




あなたを、あなたの想いを、利用するーー







「う、あ、ああああああああぁぁ」



彼の背に腕を回し、すがりつくかのように抱きしめた。





彼は、あたしを力強く抱きしめ返す。


2人の身体に隙間は無く。

静かな静かな部屋の中、彼が耳元で甘く囁いた。






「俺に溺れろ・・・」




胸に切ないような愛しいような想いを抱いたまま、あたしは彼の温もりに、彼の愛に溺れる。




頼りない月明かりが、淡く儚く、あたし達を照らしていた。






*end*