4月に入りまだ肌寒い日も続く中、桜はもう時期が終わると勝手に思い込んでいるのか、既に散り始めていた。 陽気な春の匂いに、私は鼻をひくつかせる。 「あったかい匂いがする」 「はは、なにそれ。あったかい匂い?」 全身を包んでくれるような、そんな心地いい匂い。 「翔陽、急ご!」 そう言って私は、カバンを背負って走り出した。