夜、シルフェは何かが燃えるような、焦げ臭いにおいで目が覚めた。

ここは最初にシルフェが連れてこられた隠れ家だ。

半身を起こし、廊下の向こうに目をやると、白い煙が見えた。

家の中に、かなり充満している。

(火事……!?)

「ボリス―――!!」

大声が聞こえたのか、ボリスが部屋から飛び出してきて、すぐさま事態を悟ったようだった。

「この燃え方、尋常じゃない…火計か!?」

「え、それってつまり……」

この隠れ家が、敵に襲われているということだろうか。

「気をつけろシルフェ。家から出たら矢で狙い撃ちされるかもしれない。
裏口から逃げるぞ!」

シルフェは頷き、ボリスと共に駆け出した。

小さな裏口の扉を開け放つと、それを待っていたとばかりにたくさんの矢が飛来してきた。

ボリスはそれを残らず剣で叩き落とす。

「裏口にも敵、か…囲まれているかもしれない」

だからといって家の中にいては火に巻かれてしまう。

二人はここを突破するしか助かる道はなかった。