「白石が子どもの頃から無駄な努力で想い続けている初恋の男。そいつを忘れるための見合いだろ? ほかに男の影なんてなかったし、じゃあ、その崩れきって緩んだ顔を見せる理由はなんだ?」

「崩れきったなんて、本当に失礼なことばっかり言ってるよね。小学生の頃の憎たらしい男の子がそのまま大人になったみたいで笑えるんだけど」

というより、私の大切なリボンを墨汁で汚したあの頃よりも口がたつようになって、さらに子どもじみた発言が目立つような気もする。

黙っていれば格好いいのにな。

「で? やっぱり『ルイルイ』のスイーツか? それとも新居に欲しいって騒いでたライトが手に入ったとか」

「あ、そういえばあのライト、週末に配達されるってメールが来てた」

ここ数日の慌ただしさで忘れていたけれど、美乃里さんがお祝いにくれたソファと並べると合いそうなルームライトが届くのだ。

新居に必要なものを揃えるために回っていたお店で一目ぼれしたそれは、ポール部分とアーム部分が分かれていて、ソファの横に置き読書用のライトとしてもアームを曲げれば対応できるという優れもの。

今回家を買うために手持ちのお金のほとんどを使ってしまったこともあり、必要最低限の家具や家電しか買っていないけれど、このルームライトだけは諦められなかった。

翔平君の部屋に兄さんと遊びに行ったときにもよく似たライトが置いてあって、いいなと思っていた。

もちろん、翔平君の部屋にあるものと比べればかなりお手頃な価格だろうと思うけれど、私にとってはかなりの贅沢だ。

「週末って、土曜に届くのか?」

「あ、うん。夕方だって」

今日帰ったらリビングを掃除しておかなきゃ。

ただでさえ夕べ翔平君が泊まったせいで落ち着かなくて、掃除どころじゃなかったし。

……泊まったといっても、翔平君とは何もなかったけど。

あ、キスはしたし、その先の濃い目の触れあいはたしかにあったりもしたけれど。