「危ない!」
”口”が何者かもわからないのに、気づけば未央は叫んでいた。
彩芽が驚いた顔でこちらを見る。
彼女の顔をこうしてまじまじと見るのは初めてだ。
未央の声を聞いてもなお、”口”に触れようか触れまいか迷っている彩芽の腕を、後ろに立っていた山口大翔[ヤマグチ ヒロト]が静かに引いた。
大翔は未央の幼なじみ。
元気だけがとりえのチビだ。
「大丈夫か?」
大翔が心配そうに声をかける。
「えぇ」
二、三歩、彩芽は後ろに下がると、
「教室を出ましょう。誰か呼びに行かなきゃ。早く!」
振り返りながらドアを指差した。


