”口”が紗希の首から上を食いちぎった。
主を失った身体は、それでも何かを求めようとするようにさまよって、そして力尽きた。
ずさずさずさ、と紗希の身体が崩れ落ちる。
動脈からあふれ出る鮮やかな血が、一歩遅れて床を塗っていく。
怖くて、怖すぎて、誰も声が出せなかった。
”口”が残った紗希の身体に食らいつく。
背中から紗希の内臓らしきものが飛び出してきたとき、ついに未央は吐いた。
”口”は紗希の血を浴びて、よりその赤色を濃くしたようだ。
腕一本、指一つさえ残さずに、”口”は紗希を食べ終わった。
床に残った艶やかな血の色だけが、紗希の生きていた証だった。


