「松井さん、ごめんなさい」
絞り出すように、彩芽は言った。
紗希の涙はもうおさまっている。
代わりに、彩芽の目からこぼれ落ちてきた。
彼女が泣くのをみるのは初めてだ。
友里と紗希の二人に責められたときも、泣かなかった。
彼女は強いのだと思っていたが、きっと彼女は本当は強くない。
手のこうに落ちた水を、未央は驚きの目で見つめた。
自分の涙だ。
彩芽を見て、未央も感化されたらしい。
未央の涙はその一滴で止まったが、彩芽は止まらない。
彩芽の涙が、静かに床をぬらしていく。
何も言わず、ただそんな彩芽を見ていた紗希が、片手を上げた。
左手だ。
紗希の利き手であったはずの右手は、だらりと垂れさがったまま。
「泣かないで。
紗希はもうすぐ死ぬんだから。彩芽のせいで」


