「あれだけ俺と棗のことに踏み込んで、みんなに踏み込めないってなかなかふざけたこと言うなって思った」
「あ、あれは感情が高ぶってしまったっていうか、何ていうか……ごめんなさい」
あれだけ悩んどいて矛盾してること言ってたなんて……。
「俺は干渉されるのが嫌いだ」
「……」
「自分の奥底に踏み込まれることはとてつもなく気分が悪い」
重い言葉がのしかかる。
そうだ、皐月はいつも、どこか一線を引いていて。
関わるな。そのラインから足を踏み入れるな。
そうやって警告しているのが雰囲気で伝わってくるのがよくわかる。
やっぱり私はお節介が過ぎたんだ。
「ご、ごめんなさ……」
反射的に謝る。
「……でも、あんたは俺に気づかせてくれた」
え……。
目を見開く。
「棗のこと……ありがとな」
「……っ…」
初めて。
初めて、皐月が私に向かって笑ってくれた。
それはほんの少し口角を上げただけのわかりにくいものだったけど、確かに皐月の笑顔だった。
胸に熱い何かが込み上げる。
皐月はすぐに無表情になって、フイッと顔を背けたけれど、
「……これからもあんたの思ったように進めば」
優しい声音に笑みが零れる。
いつか言われた湊君の言葉を思い出す。
『第一は自分がどうしたいかだと俺は思うけど?』
最初は冷たい雰囲気を纏っていた皐月が、今は湊君と同じように私の気持ちを考えてくれている。
だから、その言葉に少しだけ、皐月に認めてもらえたような気がした。


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