思えば、皐月と2人きりで話すのは初めてここに来たとき以来だ。



皐月を見ると、綺麗な横顔に目を奪われる。



それと同時に棗ちゃんのことを思い出す。



皐月は棗ちゃんに好きだって伝えたらしいけど、どうして付き合わないんだろう……?


湊君は理解していたようだったけど、私は皐月のことをよく知らないからわからない。



最近、みんなと関われば関わるほど、みんなのことを知りたいと思ってしまう自分がいる。



でも、いつも踏み出せない自分がいて。



だから、今だって皐月に聞くのを躊躇ってしまう。



このまま聞かない方がいいんじゃないか。



「……い」



聞いたら皐月を嫌な気分にしてしまうんじゃないかって……。




「…おい。聞いてんのか」




皐月の低い声にハッとなる。




「……あっ、ごめん。ぼーっとしてた……」




皐月がハア、とため息を吐く。



「さっきから視線が鬱陶しい」



眉根に皺が寄っている皐月に慌てて謝る。



「ご、ごめんなさい……」


「……別に。さっさと座れば?」


「あ、うんっ…」



慌てていつもの場所に腰を下ろす。



チラッと皐月を見ると、バチッと目が合った。