誰かを想うということはこんなにも綺麗で温かくて優しいものなのかな。
私にはまだわからないから難しいけど、棗ちゃんを見ていたらわかる。
皐月のことが愛しいという気持ちが。
そばにいれるだけで幸せだという想いの強さが。
好きな人の隣にいることがどれだけ幸せなのかということが……。
◇◇◇◇◇
放課後になって、第一図書室に向かう。
いつも一緒に行くはずの湊君は先生から呼び出しがかかってしまい、先に行ってていいよとのこと。
数日前の私ならチャンスだと思い、こっそりと帰ろうとしていただろう。
でも、どうしてか今はそうしようと思えない。
なんで……?
考えているうちにいつの間にか足が第一図書室に向かってしまっていた。
閉まってるかな……?
そう思ったけれど、ドアは軽快な音を立てて開いた。
晴達もう来てるのかな?
奥にあるいつものソファに行くと、
「あんたか……」
ソファに座って本を読んでいる皐月と目が合った。
皐月以外はまだ誰も来ていない。
「湊は?」
「あ、先生から呼び出されて……」
「ふーん」
それだけ聞いて、また本を読むのを再開する。
「えと……晴と達己は?」
恐る恐る聞くと、皐月はこちらを見ずに、
「加藤から雑用」
「そうなんだ……」
「……」
「……」
「加藤ってこの前言ってたカトちゃん、だよね?」
「ああ」
「……」
「……」
会話が続かない。