「……何が言いたい」
私を見下ろす皐月の目が怖い。
ギュッと手を握る。
「相手の気持ちを聞こうとしないなんて、そんなの自分の気持ちから逃げてるのと同じだよっ……」
どうしてわかんないの……。
棗ちゃんの想いに、どうして耳を傾けてあげないの……。
「自分の気持ちを聞いてもらえないまま、逃げられることが、相手にとってどんなに辛いか考えてよっ……!」
自分は向き合おうとしてるのに、相手から目を背けられて。
そんなの……辛いよ……。
「……」
「棗ちゃんは……皐月のこと、冷たいけど、本当はすごく優しい人だって私に言ったよ……?」
皐月の眉がピク、と動く。
「皐月のことが大好きだって、話してたらわかるぐらい、幸せそうに笑うんだよ……」
どんなに冷たくされても、強がってでも、消えない強い想い。
「だから、ちゃんと棗ちゃんと向き合って……!」
皐月の目をそらさずに見て、伝えた。
あまりに一気に喋りすぎて、ハアハアと息が上がる。
「紫苑……」
私の後ろで棗ちゃんが皐月と私を交互に見る。
「……達己、湊」
今まで黙って聞いていた晴が口を開く。
「はーい」
「んだよ、ここからが面白そうなのによ」
晴の言葉に2人がヒラヒラと手を振って、通路横にある階段を降りて行く。
「……皐月」
「……」
「紫苑にここまで言われたんだ。そろそろ棗とちゃんと話せ」
「……」
「紫苑、行くぞ」
晴に手を引かれ、されるがままに一緒に階段を降りて行く。
「お前も言うようになったじゃねえか」
「結構度胸あるんだね」
「……もう心配すんな」
3人と一緒に歩きながら、うん……と頷く。
もう私ができることは何もない。
後は2人次第だ。


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