紫苑 -SHION-




「晴…ちょっと2人だけで話させて」



棗ちゃんが私から体を離して、晴を見る。



「……ああ」



立ち上がった晴が私と棗ちゃんを見た後、



「……行くぞ」



「チッ。つまんねえな」



「そんなこと言ってないでさっさと歩きなよ」



「……」



達己達を連れて、話が聞こえない距離までは離れて行った。




それを確認すると、また私の顔を見た棗ちゃん。



「……紫苑、私ね……」



「……うん」



開いた口が、言葉を躊躇うように閉じる。




「……」



「……棗ちゃん?」



「あ、ごめん……」



ハッと私を見て、また口を開いては閉じる棗ちゃん。




「……」



「……話したくないことは無理して話さなくていいんだよ」



「っ、」



「知りたいけど、棗ちゃんが辛いなら聞かない」




そんな私の言葉を聞いて少しの間俯いていた。



けど、バッと顔を上げて私を見た時の目はもう迷いはなかった。





「私ね、中学の時にも皐月関係でこういうことあってね、たくさんいた友達もそんな私から離れて行った……」



「……」



「だから、このことは家族と晴達しか知らなくて、信頼できる友達もいなかったから、他の誰にも言ったことがなかったんだけど……」



「……」




「……私、左耳が聞こえないの」







え……?