「……落ち着いたか」


「……ん」




やっと落ち着いてきた私に、晴から優しく声をかけられる。



私が泣き止むまで待っていてくれた晴。




他のみんなは授業があるから、と一旦教室に戻って行った。




晴には申し訳ないことしたなあ。




幸いなことに、ここは生徒達が滅多に通らない通路だから、さっきの昼休みの間も、今の授業の間も誰も通らない。




……先輩達も上手くここのトイレに呼び出したことで。





「……棗が放課後紫苑と話したいって」



「……うん」



「紫苑」



「……ん」



「無茶しすぎだ」



「えへへ……」




苦笑いを浮かべる私に、晴がため息を吐く。




「女なんだから、顔に傷つくんな」



頬に手を添えられ、少し顔に熱を帯びる。




泣きながらも水道で洗った傷はもう血は出ていない。



元々爪でひっかいただけだから、すぐに血も止まったし、傷もそんなに目立たないから、大丈夫なんだけど。




「あの女ども……」



何故か私より晴がご立腹。




「……一回しめるか」




……冗談に聞こえない。


本当にやりかねそうな言葉に慌てて止める。





「わ、私はもう大丈夫だから!ちゃんと謝ってもらったし……それに……」



私、結局何にもできなかった。


晴達が来てくれなかったら、先輩達も非を認めてくれなかった。