「あっ……待ってください!まだ謝ってもらってません……!」
絶対に聞こえてるはずなのに止まろうとしない先輩達。
結局、何にもできない自分に腹が立つ。
私、ただ迷惑かけただけだったのかもしれない。
悔しくて、目に熱いものが込み上げてくる。
そんな時。
「おいおい、まさかこのまま逃げるわけじゃねーよな?」
いつの間に逃げる先輩達の前に立ったのか、な?とニヤリと笑った達己。
「た、達己くっ……」
「おら、棗と紫苑に謝れよ」
「そんなことっ……」
「謝れっつってんだろ!」
いつもニヤニヤと何かしら笑っている達己が声を張り上げ、表情が無になったのに目を見開く。
「それが嫌なら、ここで俺が無理矢理土下座させてやろーか?」
いつものヘラヘラとした達己はいない。
本当に土下座させそうな達己に怯え、こちらを振り向いた先輩達はボロボロと泣きながら、
「ご、ごめんな…さい……」
3人とも謝ってくれた。
そして、今度こそバタバタと逃げ去って行った。
そして、先輩達が見えなくなった後。
「ぶはっ!傑作だったなあ、あの顔」
さっきの達己はどこへやら、一瞬でまたニヤニヤといつもの笑みが浮かんでいる。
……達己は本気で怒らせたらダメだ。
そんなことを思っていると、
「……頑張ったな」
晴がポン、と私の頭に手を置いた。
晴……。
「うう〜っ……」
泣くつもりなんてなかったのに、晴の言葉にホッとしたのか、張り詰めた糸が切れたようにポロポロと涙が零れ落ちてくる。
「あーあ、晴が泣かせちゃった」
「……泣くなよ」
「…っ…ごめっ…なさ…」
「ったく……」
ギュッと晴に抱きしめられる。
「紫苑にしちゃあ、上出来だな」
「紫苑ちゃんお疲れ」
達己と湊君の言葉にもっと涙が溢れた。