紫苑 -SHION-




「……紫苑」


フルーツオレを飲みながら、晴が口を開く。



「……棗のこと、よろしくな」


「……うん?」



曖昧に頷く私に目を細めて、クシャと頭を撫でた。



それより……。



「飲み過ぎだと思う……」


机に転がる空になったフルーツオレの紙パック。



「買いだめしてたのがなくなってて、ここ最近全然飲んでなかったからな」


「そうそう、いつものことだよ」


「……ああ」


「そうですか……」



でも、いいなあ。

そうやって夢中になれるぐらい好きになれるものがあるって。



「……美味い?」


「うん、美味しいよ」


そう言うと晴は嬉しそうに笑った。






湊君の「支えてやって」


達己の「女の嫉妬っつーのは怖ぇんだよ」


晴の「棗のこと、よろしくな」



あんなにヒントをもらってたのに。


私、何にもわかってなかった。




わかって、なかったの……。