紫苑 -SHION-




「紫苑ちゃん」



「ん?」


「棗って明るいからさ、想像できないかもしれないけど、色々背負ってるところあるから支えてやって」



「うん……」



わかった、と頷いたけれど、それがどういう意味なのか、この時の私はまだよくわかっていなかった。






◇◇◇◇◇




それから一週間後。



放課後、私はいつも通り第1図書室にいたんだけど。




「……」


「……」


「……」


「……」


「……」




空気が重いのは気のせいかな……?



チラッと斜め前を見ると、すごく冷たい顔をした皐月が腕を組んで座っている。




ひいいい……。


目が合ってもいないのにバッとすぐ目線を逸らす。


怖すぎて直視できない……。




そんな皐月の隣に座っているのに、湊君は黙々とイチゴのお菓子を食べながらスマホをいじっている。

湊君、強し……。




晴は目を閉じていて、少し体が傾いている。

いつも通りすぎて……。




いつも私にちょっかいかけてくるはずの達己も最近はスマホのゲームばかりしている。


ゲームから流れるピョンッやバンッ、ドゥルルルルって音だけが図書室の中に響く。


せめて、その音を消してほしい……。





私はというと、久しぶりに本をゆっくり読めるはずなんだけど、この重い空気ではなかなか本の世界に集中できない。



これなら帰った方がマシかなあ……。



周りを見て帰ろうか、と迷っていると、




ガタン



「……帰る」




皐月が立ち上がって、また明日という暇もなく早々と帰って行ってしまった。