「皐月!?」
棗ちゃんが私と湊君の間を抜けて教室に入っていく。
皐月のいつもの落ち着いた顔が驚きに変わる。
「あ?お前…棗か!?」
「……」
「やっぱり達己と晴もいたんだー!久しぶり!」
「おー…って、何でここにいんだよ?」
「何でってこの高校に入学したからよ!」
「へー、やっぱり皐月追いかけてか?」
「もちろん!」
バン!!
達己と棗ちゃんが話に熱を上げていた途端、机を叩いた音が教室中に響いて、思わずビクッとなる。
シーンと静まり返った教室に、ガタン、と立ち上がった皐月にみんなの視線が集まる。
「湊…どういうことだ」
いつもより低い声が湊君を呼ぶ。
隣を見ると、やっぱりか、というように苦笑いを浮かべる湊君。
まるでこうなることがわかっていたように。
「皐月…?」
棗ちゃんが戸惑ったように皐月に近づき、ソッと手を伸ばす。
パシンッ
けれど、その手は払われ、行き場を失ったようにブラン、と下がる。
ここからは棗ちゃんの顔が見えない。
「……悪いけど帰る」
皐月はガッと鞄を掴んで、私の横を通り過ぎて教室を出て行った。
通り過ぎた時に見えた皐月の顔は冷たくて、でもどこか辛そうだった。