紫苑 -SHION-





「実はこの学校入ったの、その人がいるから入ったんだ」



言葉から、顔から、本当に好きなんだなって伝わってくる。



聞いてるこっちまで幸せをもらえそうなぐらい。




「わ、そういうのいいなあ」



「ずーっと片想いだけどね。振り向いてくんないの!」



そんなことを話しながら、今度は私が座って、棗ちゃんに軽く背中を押してもらう。




「…どんな人なの?」



キラキラと瞳を輝かせる私に、棗ちゃんはんーと唸る。




「冷たいけど本当はすごく優しい人、かな……」



そして、さっきより落ち着いた柔らかい声で答えてくれた。



それだけで、どんなにその人が棗ちゃんにとって大切で、愛しい人なのかがわかる。





「いいなあ…」



誰かにとって大切に想ってくれる人がいるのは、すごく素敵で少し羨ましい。





「あっちは私のこと嫌いかもしれないんだけど……だけど!そんなんで諦める私じゃないからね!」




フン!と鼻を鳴らした棗ちゃんはすごく力強くて、思わず笑ってしまった。





「あ、紫苑、何笑ってんのよー」



「ふふ、だって、すごく頼もしいなって思って……」



「きっと紫苑も恋したらわかるよ、この気持ち」




そうなのかな?



私にとって恋は無縁で、誰かを大切に想う気持ちもあまりわからなくて。



いつかわかるかな?



それにしても。




「今日初めて会ったばかりなのに、こんなに聞いちゃってごめんね……?」



初対面の人にいきなり自分の恋愛を教えるのはあれかな……。




「いやいや、私が言い出したことだし、それに私、絶対にこの気持ちは誰にも負けないってくらい想ってるし、紫苑は嬉しそうに聞いてくれたから私嬉しかったよ!」




なんて、そんなことを言ってくれるからすごく嬉しくて




「あ、あの、棗ちゃん!」


「ん?」


「よ、良かったら…お弁当一緒に食べよう?」



私からも勇気を出して一歩、踏み出そう。