紫苑 -SHION-





「…あ」


「……どうかした?」



スマホを見て、思わず声が漏れた。




「そろそろ帰ろうかなあって…」


「ああ、もうこんな時間か」



湊君が自分のスマホをポケットから出して確認する。




「じゃあ、俺らも帰ろうか」


「そうだな。紫苑いないとつまらねえし」




思わず女の子がきゅんとしてしまうようなことを呟くけど、達己の場合意味が違う。



自分の退屈を凌ぐ相手が帰るからつまらないということで。





「……そんなに私って面白い?」



「まあな」



「……達己に言われても何か嬉しくない」



「あ?んだと?生意気な口聞くのはこの口かあ?おら」



「ひっ…ごめ…って、いひゃいいひゃいっ……」



片手でガッと顎を掴まれ、両頬を押される。




「ったく、やめろよなー」


「いてっ!」




湊君がバシッと達己の頭を叩き、




「ほら、行くよ」


と言って、先に図書室を出て行った。




「チッ」


舌打ちをして、頬を押された私の顔を見て笑った達己も、




「ブッサイク」


「なっ…」




フン、と息を鳴らして、私の顔から手を離してかったるそうにポケットを掴んで行ってしまった。




うう、とそんな達己の背中を睨む。



達己のバカ……。


確かにさっきの私の顔は酷かったかもしれないけど……。


ブサイクって……。




「…行くぞ」



そんな私を何故か晴も笑って、ポン、と私の頭に手を置いて、歩き出した。




「……うん」




触られた頭に少しだけ触れ、私も晴の後に続いて図書室を出る。