紫苑 -SHION-




「あの、お金…」


「いらない。それにそれ買ったの俺じゃないから」


「え?」


「あんたのは晴が買ったよ」




湊君の横に座りながら、コーヒーのプルタブを開けて一口飲んだ皐月。



その視線の先には既に自分専用のソファに座っている晴。




手には紙パックのフルーツオレが握られている。



フルーツオレ……何か意外かも……。





「あの、これ、ありがとう」


「ん…」




無表情で頷いて、パックにストローを刺して勢いよく飲む姿もやっぱり絵になる。


何しても綺麗って得だなぁ……。




「つーか、やけに遅かったな」


「…加藤の奴だ」


「何、お前らまたカトちゃんに捕まったのかよ」


……加藤?……カトちゃん?




「…担任だ」



何のことかさっぱりわからない私に、晴が教えてくれた。




「そ、加藤浩二(カトウコウジ)。略してカトちゃん」


「加藤先生はよく生徒を雑用に使うからねえ。特にこの3人は」




晴に続けて説明してくれた達己と湊君。




「あいつ、人使い荒すぎ」


「カトちゃんに見つかったら絶対逃げ出せねえもんな」




……私の中で加藤先生がすごい人に思えてきた。


晴達が逆らえないって想像できない。