「紫苑ちゃん」
「……」
「…紫苑ちゃん?」
「……」
「こいつ、本読んでる時の集中力やべえな……」
「うん…って達己、何しようとしてんの……」
「あ?まあ、見てろ」
フー!
「ひゃあ!」
突然左耳に感じた感覚に背中がゾワッとなり、一瞬で本の世界から出てきてしまった。
「おー、いい反応」
「へえ、紫苑ちゃんって耳弱いんだね」
「なっ……」
面白そうに笑う2人に左耳を抑えながら、少しだけ眉が釣り上がる。
「おい、顔真っ赤にしながら怒ってんぞ」
「…っ…いきなりそんなことされたら驚くよっ」
ニヤニヤとした笑みを浮かべる姿にムッとなる。
ここに来だしてからもう一週間が過ぎようとした。
授業が終わって帰ろうとしても湊君に必ず捕まってしまう。
上手く言い訳をできない私が逃げられるわけもなく、毎日第一図書室に足を運んでいた。
今日はまだ晴と皐月が来ていなくて、湊君と達己だけなんだけど。
とにかくこの2人、特に達己がいるとゆっくり本も読めない。
「にしても晴と皐月、おっせえなー」
「何か用事でもあったの?」
「……あー、そういえば女から呼び出されてたな」
「え?」
本を読み返そうとページを開いた時、ピタッと一瞬手が止まった。