「どいつもこいつもむかつくな」
ドサッとソファに座る達己はそんなことを言ってても顔は笑っている。
……ていうか。
「…っ…晴、もう大丈夫で…」
慌てて言葉を止める。
危ない…また敬語になるところだった。
それにしても今、晴に抱きしめられてる状況もなかなか恥ずかしくて。
慌てて離れると晴が少し名残惜しそうな顔をした。
「……?」
どうしてそんな顔するんだろう?と首を傾けていると。
「紫苑ちゃん、皐月も呼び捨てでいいよー」
湊君が声をかけてきて、そちらに意識が移ってしまった。
皐月さんを呼び捨てって……。
「それは……ダメなんじゃ……」
「え?ダメなの?」
即座に隣を見る湊君。
皐月さんが雑誌を読む手を止めて、ゆっくりとこちらに顔を向ける。
バチッと目が合って、思わず緊張で鼓動が速くなる。
皐月さんのことだから、は?何で?って言いそう……。
「……別に」
……え?
予想外の答えにポカン、となっていると皐月さんの視線はすぐに雑誌に戻ってしまって、何でという疑問を隠せずにいると。
「それじゃあ、」
湊君の声にハッとなる。
「皐月のOKも出たし、改めてこれからよろしくね?紫苑ちゃん」
湊君が可愛らしい笑顔を浮かべる。
「面白え毎日にしてくれよ?」
達己は期待を持った相変わらずの笑い顔。
「勝手にすれば?」
皐月がこちらを見ずに淡々と呟いて。
「紫苑」
名前を呼ばれて振り向くと、優しく頭を撫でられ思わず目を細める。
「…よろしくな」
なんて、小さく微笑む晴。
これからの毎日に、少しの不安と戸惑いが渦巻く。
あの…私はいったい、どうなるんでしょうか……?