紫苑 -SHION-




「やっ……」



「おい、いい加減に……」



視界の端で湊君が立ち上がったのが見えたその瞬間。




「きゃっ……!」


グイッと体を引っ張られ、気づけば誰かの胸の中にいた。




「達己、ふざけんなよ……」


低いハスキーな声。



顔を少し上げるとすぐ目の前に晴の顔があった。




「……っ…」


助けてくれたの……?




達己さんがまたニヒルに笑う。


その笑顔が苦手だと感じた。




「ハッ。晴もとうとう我慢の限界だった?」



「……嫌がってんのにやってんじゃねえよ」



「はいはい…悪かったな?」



立ち上がって、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた達己さん。





「……大丈夫」



少し怖かったけれど、達己さんはからかおうとしただけだから。




「……達己」


「え?」


「達己って呼べよ?」




な?とまた口角を上げて笑った彼に、コクンと頷いた。





「ったく、達己は暴走しすぎんの止めろよ」


「わりーわりー」


「ほんとに思ってんだか」




なあ?と湊君が隣にいる皐月さんに同意を求める。




「達己はうるさい、バカ、キチガイ」


「だって?」




パラと雑誌を読みながら答える皐月さんの言葉を聞いて、ニッと達己を見る湊君。