「おーい、そこのお二人さん」
奥の一角から聞こえた達己さんの声に、湊君はすぐに立ち上がった。
「落ち着いた?」
「あ、うん」
「じゃあ、あっち戻ろ」
「…ありがとう……わ!」
ね?と差し出された手に遠慮がちに手をのせると、グイッと引っ張られて反動でこけそうになる。
「やばっ!」
でも、湊君が咄嗟に受け止めてくれたおかげで何とか転ばずにすんだけど……。
私の今の状態はお腹に湊君の腕が回っていて。
「っ……!ご、ごめん!」
反射的にバッと素早く離れる。
「紫苑ちゃんは悪くないよ。思いきり引っ張った俺がいけなかった。ごめんね」
「ううん、私こそ本当にごめん……」
「もー、だからごめんじゃないって」
体を離しながら苦笑いを浮かべる湊君にでも…となるけれど。
「行こ」
「…うん」
そんな私にポン、と頭に手を乗せて、すぐに背中を向けて奥の部屋に戻って行って、後をついていく。
奥の部屋には相変わらずこちらを見てニヤニヤと笑う達己さんと、眼中になさそうな皐月さん、そして何故か湊君を睨んでいる晴さん…じゃなかった……晴。
「何2人でいちゃいちゃしてんだよ」
いっ…!?
「ちがっ…」
「うるさい。いちゃいちゃなんかしてない。晴も睨むのやめろよな」
ぶんぶんと手を振って否定しようとすると、湊君が皐月さんの横に座りながらサラッと否定する。
「んだよ、面白くねえなー」
チッ、と舌打ちをした達己さん。
さっきから思ってたけど、達己さんは何に興味持ってるんだろ……。
「……座れば?」
「あ……はい」
いつの間にか私を見ていた皐月さんに促されて慌てて座る。
きっと立ってて邪魔だっただけなんだろうけど……。


![[特別版]最強姫〜蘭蝶と白虎に愛されて〜](https://www.no-ichigo.jp/assets/1.0.794/img/book/genre1.png)