そんな私に軽く鼻で笑い、先行ってるぜー、とこちらを見もせずにひらひらと手を振って行ってしまった達己さん。
あ、あの人は皐月さんと同じくらい、いや、それ以上に手強い気がする。
「ったく、あいつはもー。ごめんな?達己、紫苑ちゃんに興味あるらしいから」
腰に手をあてて呆れたようにふー、と息を吐く湊君。
興味なんて持たれても嬉しくないんだけど……。
もう完全に第一図書室に行きたくなくなったよ。
これから私にいったい何が待ち受けてるのか、考えるだけで泣きたくなる。
もうだめだ、私の平和な高校生活は第一図書室に足を踏み入れてしまってから終わったんだ。
平和で、それなりに楽しい学校生活を送れたら良かったのに。
どうやら私は、そんな高校生活を送ることはできないようです。
「着いたよ」
第一図書室と書かれた古いプレートの下のドアの前に着き、湊君がドアに手をかけてガラッと開ける。
一昨日来た時と同じようにドアから見える窓には綺麗な桜の木。
私は一度深呼吸をして、中に足を踏み入れた。
奥の一角に進むと、相変わらず二人がけのソファが3つ並んでいた。
「晴、」
湊君が黒髪の人の名前を呼ぶ。
腕を組んで目を瞑っていた彼は、ゆっくりと瞼を上げる。
普段なら何でもないその動作に目を奪われる。
目を開く時に一瞬睫毛が彼の瞳を覆い、とても綺麗だと思った。
「……」
皐月さんは私をチラッと見たけれど、すぐに持っていた雑誌をパラ、とめくり読み続ける。
少しだけ拍子抜けした。
何か言われるのか身構えていたけれど、そんな必要なかったようだった。


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