紫苑 -SHION-




軽い足取りで歩く湊君に慌ててついて行く。



「質問一つ目、鍵を持ってるのは晴だよ」



「晴さん…?」



「そ。一つだけだから2つ目はなしね」



また振り向いて笑った湊君の笑顔と言葉に、何となく2つ目は聞いたらいけないような気がした。




それからは黙ってトコトコと湊君の後ろをついていく。



……なんで私を第一図書室に連れて行くんだろう?



だって、私と彼らは昨日初めて会ったばかりなのに、なんだかおかしいよ。




目の前の湊君の背中を見つめる。



背は小柄な方だけど、女子より肩幅は広くてやっぱり男の子なんだなあって実感する。




学ランの下に着ている赤のパーカが印象的。



ジッと背中を見ながら歩いていると、




「……湊!」



いきなり後ろから大きな声がし、ビクッと足が止まり反射的に振り向く。




「やー、中庭で昼寝してたらすっかり放課後になっちまってた」



ふわあ、とあくびをしながら近づいてくる金髪の男の人、達己さんだった。




達己さんは湊君の近くにいた私に気づいて、面白そうにへえ、と口角を上げた。



「そいつ、昨日の紫苑ってやつだったけ?さっそく連れて来たのかよ」



「ああああのっ……」



ふーん、と上から下までジロジロと舐め回すような視線に、耐えられず俯く。




「皐月。紫苑ちゃんを困らせるなよな」



「あ?ああ、悪い悪い。おい、紫苑」



「は、はい……!?」




いきなり名前を呼ばれて、驚いてバッと達己さんの顔を見る。




そんな私にフッと笑い、ズボンのポケットに手を突っ込んだまま、腰をかがめて私の目線に視線を合わせ、




「せいぜい、楽しませてくれよ」





不敵な笑みを浮かべた達己さんに私は息を飲んだ。