昨日のあの時からもうあの人達とは会うことはないって思ってたんだけど……。




「しーおんちゃん!」


「は、はいっ」


「一緒にお弁当食べない?」


「ええっ…!?」




忘れてた……ミルクティー色の男の子……。



朝、教室で座っているといきなり、



「おはよう、紫苑ちゃんだよね?」



って声をかけられたのには驚いた。




そういえば、昨日私と同じクラスみたいなことを言っていたような……。



まさか、本当に同じクラスだったなんて。





「あ、あの……湊君?」



朝教えてくれた男の子の名前、湊っていうらしい。



「ん?」



目の前でパンにかぶりつき、もぐもぐと口を膨らませて食べながら首を傾ける仕草は、母性本能をくすぐられる。




「その……私はいいから友達と食べてくれば……?」


「え、んー、別に気にしなくていいよ」




そんなこと言われても……。


チラッと視線を周りに向けるとヒソヒソとこちらを見つめながら話す女の子達。





ううう……気にしなくていいとかって言われても無理です……。


お弁当がまともに喉を通らないよ……。





もくもくとパンを食べ進める湊君はクリッとした目が印象的な、かっこいいより可愛いが似合う男の子。


そういえば、昨日会った人達みんな美形だったなあ。


類は友を呼ぶって本当だったんだ。




だから、湊君は女の子達から人気で、そんな人と私が一緒に2人でご飯食べてたら、女の子達の視線が痛いわけで。




「……」



「…どうかした?」



やっぱり今からでも断わろと思ったけれど、不思議そうに聞いてくる湊君に言えるわけもなく、




「……なんでもない」




……私の意気地なし。