「……あの女と会ったことあるのか?」


「ああ」


「でも、あの女はどう見ても晴と初めて会った感じだったけど?」


「……俺が一方的に知ってるだけ」


「……」



え、うそ、マジかよ。

晴の片想いってやつ?



女に言い寄られてばっかで、誰かを好きになるとかなかった晴が?

まさかの晴から好きになっちゃった感じ?



「…うわ、面白え。皐月、俺晴の恋ってやつ応援してえなー」



呆然としていると、隣にいた達己が足を組み替えながら棒読みで言う。


あー……こうなったら達己は止められねえや。


別に達己にとっては、晴が恋したのを応援したいとかじゃなくて、久しぶりに現れた暇つぶしが嬉しいだけだろうけど。

しかも、その暇つぶしが晴だ。



皐月には悪いけど、ここは……


「ごめん、皐月。俺も達己に同意」



別に達己みたいに面白いとかじゃなくて……まあ、それもちょっとはあるけど。



晴が初めて誰かを好きになったんだ。


俺は応援してあげたい。



俺と達己を見て、皐月はくしゃくしゃと前髪を触りながらため息を吐き、



「……変な女なら即出てってもらうから」

「だって?晴」


チラッと晴を見ると、いつもと変わらず無表情だったけど少しだけ口角を上げていた。


まあ、晴が好きになる子なら変な子じゃないと思うけど。


皐月もあんなこと言ったけど、それをわかってるから許したんだろうな。



「面白えことになりそうだな…」



隣でポツリと呟いた達己がニッと獲物を見つけたかのように笑った。