「何?晴に学ラン貸してもらったの?」
ズイッといきなり目の前に現れたミルクティー色の髪にぴょこんと前髪を結んだ男の子は、興味深そうに目を輝かせていて、言葉に詰まる。
「……えっと…」
「だって、晴ってば女に冷てぇんだよ?」
「あの……」
「初対面だよね?」
「…え?は、はい……」
どうしよう……。次から次へと言葉が降りかかってきて……。
「あれ?そういえば、君って俺と同じクラスだったような……いてっ!!」
「1人で突っ走ってんじゃねえよ」
茶髪の人がバシッと頭を叩き、ハア、とため息を吐いた。
「なんだあ、ついに晴に女ができたか?」
ツンツンと前髪を立たせている金髪の男の人が、私をチラッと見てから晴、という黒髪の人を見る。
「……」
黙ったままの晴という人。
あわわ、と慌てる。
私がこの人の彼女って、とてもこの人に失礼だよ……。
「…か、彼女じゃないです!」
「「「……」」」
いきなり大声を出した私に一斉に視線が集まり、ボンッと顔が赤くなる。
「……私が彼女とか、は、晴さんに失礼すぎますから」
「「「……」」」
「あの、今日はすみませんでした……!失礼します!」
この場にいるのが気まずくて、慌てて頭を下げて廊下を走る。
絶対変な子だって思われたよ……。
あの人達には冗談だったかもしれないのに、あんなに必死に否定するなんて私のバカ!
でも、たぶん会うことはもうないだろうなあ……。