「それじゃ亜里沙ちゃんはまずこれ、型にバター塗るのやってくれる?フィナンシェとマドレーヌの」


「あ、はい!」



畑さんの指示のもと、近藤さんが細かい手順をやってみながら教えてくれる。


二人ともすごく優しくて、うちではあまり扱わない焼き菓子の作業も、緊張はしたけど楽しくこなすことができた。



それに近藤さんはよく喋る。



「亜里沙ちゃんさー、近藤さんって言うのやめない?」


「えっ…?」


「さん付けってなんか俺すっごい年上みたいじゃん?

名前で呼んでよ。

さて、俺の名前なんだった!」


「えっと…」



いっきだっけ?かずきだっけ?

…アレ?



「あーもうさっそく忘れてるし!

樹だよ、い・つ・き!!

だからいっくんね。はい、言ってみ!」


「えっ…!?

い…いっ……

言えません……///」



いっくんは恥ずかしいよ〜…。


先輩なのに…。



「あはは!なに照れちゃってんの?

可愛いなぁもう〜。

仕方ねぇな、樹さんで許してあげよう」