だけどそこに現れたのは琉衣くんじゃなかった。


白いコックコートに身を包んだ背の高い人物。



「あ、亜里沙ちゃんいた!」



なんて、ふわっと優しく笑うのは、兄の俊介さんだった。



「あっ、俊介さん…!

すいません、なんか…」



私はホッとしつつもソファーから立ち上がる。



「いやいや、いいんだよくつろいでくれて!

だけどさ、もし今少し時間あったら店来れるかな?」



えっ…?



「わ、私がですか?」


「うん。

畑さんが今日暇だから亜里沙ちゃんが時間あれば仕込み教えるよって。

無理なら全然構わないんだけど」



どうやら俊介さんの話によると今日は琉衣くんは午後はお休みらしく、畑さんがちょうどいいから私に教えたいと言ってくれてるみたいだった。


そんなこと言われたら私は断るなんてできない。


俊介さんは無理しないでいいよって言ってくれたけど…



すぐに部屋に戻って制服からまたコックコートに着替える。


ひと息つく間もなく、再び私はレストランのベーカリーまで向かった。