好きだったら、力ずくでも手に入れたい。


誰にも渡したくない。


そう思ってたんじゃねぇのかよ。


いつからそんな弱気になったんだ?


何やってんだよ…。



「……樹さん、サンキュ」



だから俺は帽子とネットを脱ぎ捨てて、ベーカリーをあとにした。


あいつはもう車で出ちまったかもしれない。


走ったくらいじゃ追いつかねぇかも。


それでも、走ってた。

気付いたら…。



なんならあいつの家まで行ってやる。


場所くらい知ってる。


そして今度こそ言ってやる。



ずっと胸の奥でくすぶらせてた気持ち。


小高なんかに負けないくらい熱い気持ち。



あいつの顔見て今度こそ、


”好きだ”って


言ってやる。