その気持ちにはやっぱり、こたえられない。


どんなに小高くんが優しくても、私を想ってくれてても、

この自分の中にある気持ちを無視して彼に逃げるなんて、やっぱりできないから。



「気持ちはすごく嬉しい。でも…

私…好きな人がいるの。

その人はきっと私じゃダメで、かなわないってわかってる。

それでもやっぱり、他の人でいいとは思えないの。

小高くんに好きになってもらえてすごく嬉しかった。

ありがとう。

でも……、ごめんなさい」



声が震えた。


小高くんはそんな私を穏やかな目で見つめる。



「……そっか。

そうだよな。

西村ならそう言うと思ってた」


「えっ…」


「でも、いいんだ。

ありがとう。

これですっきりした」


「小高くん…」


「だから最後にさ、ちょっとだけわがまま聞いてよ」


「えっ…?」



小高くんはそう言うと、私の方に距離を縮めて…


その長い腕を私の背中にまわした。



ぎゅっ…



小高くんの優しい腕に包まれる。



「少しだけ、このままでいていい…?」



静かな公園に二人きり。


彼の最後の小さなわがままを、私は静かに受け入れた。