夕方になって仕事が片付いてくると、ベーカリーの雰囲気もだいぶ落ち着いてくる。
私は自分の作業は終わったので、いつもどおり洗い場でせっせと洗い物をしていた。
琉衣くんはまた計量をしてる。
今日もあまり話さなかったなぁ…なんて。
この前のあのやりとり以来、あまり琉衣くんが私に絡んでくることはなくなった。
たぶん私がなんとなく距離を置いてしまっているから。
だけど、話さなくなったらそれはそれで寂しい。
自分から避けてるくせになんて勝手なんだろう…。
いつの間にか私、沙良さん以上に琉衣くんと話さなくなったんじゃないかって、そんなこと考えたりして。
モヤモヤは膨らんでいくばかりだった。
もうどうしたらいいのかわからない。
ふと沙良さんに視線をやると、彼女はパン生地を入れるための板重(ばんじゅう)を取りに行くところだった。
洗い場からは意外とベーカリー全体がよく見える。
積み上がった板重は、私も一度崩してぶちまけたことがあるもの。
私より背の高い彼女はすっと背伸びをすると、その山に手を伸ばした。
すると…
ーーグラッ…、
板重の山が揺れて…
危ない、と思った時にはもう遅かった。
「…きゃっ!」



