翌日。

昨日と負けず劣らずの暑さと忙しさに、スタッフたちは滝のように汗を流しながら奔走した。

薫は何事もなかったように、マネージャー業務と接客や給油などの作業を淡々とこなした。

敦も同じように何事もなかったように仕事をしていたが、オフィスの中で二人きりになった時に“夕べはごめんね”と、一言だけ謝罪の言葉を口にした。

それに対して薫は、表情を崩す事なく“2度とあんな事はしないで下さい。それから部屋に来るのはもうやめて下さい”と淡々と答えた。


何も話したくないと言っている相手から強引に話を聞き出そうとしたり、自分の事を好きでもない相手を無理やり押し倒すなんて、敦にはこれ以上、人の心を土足で踏みにじるような事はして欲しくない。

夕べ敦は、それを拒んだ薫に何もしなかったけれど、もしまた同じ事をされたら、どうなるかはわからない。

どんなに拒んだとしても、男である敦に力では敵わないし、敦が夕べのように何もしないとは限らない。

薫は仕事に必要な場合以外の敦との接触は避けようと決めた。