トボトボと一人自宅に帰り着いた薫は、バッグを無造作にベッドに放り投げ、服を脱いでシャワーを浴びた。

さっき志信に言われた言葉が頭の中をぐるぐる駆け巡る。


“ゴメンな、頼りない男で。オレと付き合ってる事、薫がみんなに隠したがってるのわかってるから、あんな状況でもオレは何も出来なくて情けなかったよ…。”


“他の男に抱きつかれたり、あんな事言われたりしても…オレがたいした男じゃないから、隣にいる男と付き合ってるって言えなかったんだよな。”


(そんなんじゃない…。志信の事、頼りないとかたいした男じゃないなんて、一度も思った事ないよ…。)


いつも優しい志信が、冷たい目をして薫の手を離した。


“手なんか繋いでんの、会社の人間に見られたら薫が困るだろ?オレなんかが相手じゃ恥ずかしいもんな。”