もっと、君に恋していいですか?

薫は手を休める事なく拭き上げ作業を続けながら答える。

「ありがとう、でも大丈夫だよ。それより、もうそろそろ3番の計量器止まるから、作業手伝ってあげて。」

「え?」

そのスタッフが振り返ると、ちょうど3番の計量器がカチンと音を立てて止まった。

「卯月さんは背中に目があるんですか?」

不思議そうに尋ねるスタッフに思わず苦笑いしながら、薫は掃除機のスイッチを入れた。

「ないよ、そんなもん。ホラ、行って。」

「ハイ!!」

あっという間に拭き上げ作業と車内清掃を終えた薫は、満足げに笑って手を振りながら店を出る女性客の車を誘導して、深々と頭を下げた。

(すっごく喜んでもらえた…。うーん、至福の時…。)

薫が穏やかに微笑みながら振り返ると、これから店を出る車の誘導を任される。

「卯月さん、右1台お願いします!!」

「続いて左1台お願いします!!」

「了解。」

活気の溢れる若いスタッフたちの声に、薫は満足そうにうなずいた。