志信がインターホンのボタンを押すと、顔中涙の跡でいっぱいにした薫が、おずおずとドアを開けた。

志信はドアが開くのを待つのももどかしく、ドアの隙間から体をねじ込むようにして玄関に入り込み、薫を思いっきり抱きしめた。

「薫ごめん…ホントにごめんな…。」

「志信…。」

強く抱きしめる志信の腕の力強さと胸の温かさに、薫の目にまた涙が溢れた。

「一緒にいてくれなくていいなんて、ホントは全然思ってないんだ。ホントは…ずっと一緒にいたい。離したくない。誰にも渡したくない。薫の事が、好きだから…。」

「……良かった…。もう嫌われたと思って…。もう別れようって言われるんだって…。」

薫はそこまで言うと込み上げる嗚咽を堪えきれなくなり、志信の胸に顔をうずめて泣いた。

志信は泣きじゃくる薫を抱きしめながら、優しく薫の髪を撫でた。