もっと、君に恋していいですか?

薫と販売事業部に所属している同期の笠松 志信が付き合い始めて約1ヶ月。

社内恋愛が禁止されている訳ではないのだが、薫と志信が付き合っている事は、極親しい人にしか知らせていない。

会社では以前と同じように、“卯月さん”“笠松くん”と呼び合っている。

とは言え薫の所属しているSS部と志信の所属している販売事業部はフロアも違うし、日中のほとんどを社外で過ごす薫が、志信と社内で会う事は滅多にない。

それでも仕事を終えると更衣室のあるフロアの喫煙室で待ち合わせ、一緒に会社を出る。


最初の頃は毎日、会社帰りにどこかの店で夕食を一緒に食べたり、金曜日には居酒屋に行ってお酒を飲んだりしていた。

しかしそれもしばらく経つと、薫の家で薫が作った料理を一緒に食べながら、軽くビールを飲むような夕食が増えた。

そうしようと言ったのは薫だ。


“毎日だと出費がかさむでしょ?それにどうしても肉類とか揚げ物とか多くて栄養も片寄りそうだし…。私が作るから家で一緒に食べよう。ビールも箱買いしてあるし。”


仕事で疲れているのに薫の負担になっていないかと志信は心配したが、一人分も二人分もたいして変わらないからと、薫は気にも留めない様子だった。

志信は薫の優しい気遣いが嬉しくて、“薫のこういうところがかわいい”と言って笑った。