「いいの!智博(ともひろ)さんは素の私を好きっていってくれたんだから!」
「ふーっ!玉の輿ー!」
「こらっ!」
久しぶりに喧嘩してる。
透はもう夏知さんと暮らしてて、私は実家暮らしだから顔を見るのも久しぶり。
「………ねえ、透」
「ん?」
私は少しうつむく。
「私たち………いい兄妹だよね」
「………ああ」
「あの頃は透以外の人と結婚するって考えてなかったなー」
「俺もお前以外とするつもりなかった。だからファーストキスも奪った」
透を見上げる。
寂しそうな、切なそうな。
あのときと同じ笑みを浮かべて。

