私の名前は月見里 莉乃(やまなし りの)。
十六歳の県立高校に通う高校二年生。
月見里と書いてやまなしって読む変わった苗字だからよくつきみさとさんって間違われるけど、本当はやまなし。

両親と三人暮らしだったけど六年前、両親が交通事故(飲酒運転の車に追突された)で亡くなり、私は両親の知人の小鳥遊(たかなし)さんの家に引き取られた。

小鳥遊さんと私の両親は中学時代からの友人でお互いに変わった苗字だからか、すぐに仲良くなったらしい。
小鳥遊さんの家には息子さんが二人居る。

一人目は長男の脩斗(しゅうと)さん。
私は脩兄(しゅうにい)って呼んでいる。
28歳のお医者さんで数ヵ月まで私の主治医だった。

もう一人は次男の悠斗(ゆうと)さん。
私は悠兄(ゆうにい)って呼んでいる。
26歳のお医者さん(つい最近まで研修医だった)で私の主治医でもある。

ちなみに脩兄は小児科の先生で悠兄は呼吸器内科の先生なんだ。

私は生まれつき身体が弱くて喘息を持っている。
だから物心つく前からずっと脩兄と悠兄が勤めている聖楠(せいなん)医科大学附属病院に入退院を繰り返している。

最後に入院したのは半年前になる。

最近は体調を崩す事もなくなったから安心していたのに朝起きると身体が怠くて熱を計ってみたら7度2分だった。
平熱は6度5分だからちょっと高いぐらい。

幸いな事に今日は脩兄も悠兄も当直でいないから具合悪い事がバレなくて済む。
ちなみに脩兄達のご両親は今は仕事の関係で海外に居て家には居ない。

とりあえず私は制服に着替えて鞄を持って部屋を出た。

私の部屋は一階にある為、部屋を出るとすぐリビングに着く。

リビングの机の上には菓子パンとメモが置いてあった。

そのメモにはこう書かれてあった。





莉乃へ

おはよう。体調は大丈夫か?
ちょっとでも具合悪かったら学校休めよ?倒れてからじゃ遅いからな。
後、学校で具合悪くなったらすぐ保健室に行く事。

じゃあ、学校頑張ってな?


悠斗より





相変わらず綺麗な字で書いてある。
いつ帰ってきて書いたものかは分からないけど。

私はとりあえず椅子に座って菓子パンに手を伸ばした。
けど、あまり食欲がなくて私は食べずに家を出る事にした。