コンコンコン
ノックをするが、返事なし。
「朝だよ、起きて」
いつもは夕が蒼空を起こしにいく役目らしい。
でもあんな挑発をされたらきっと誰でもイラつく。
あの顔を思い出すだけでムカッとしてくる。
「……」
やはり返事はない。
仕方なく部屋に入ると、ベッドの上に大きな膨らみがあった。
布団を引っペがす。
そこにはスヤスヤと気持ちよさそうに眠る蒼空がいた。
ちゃっかり可愛い抱き枕なんかを抱えて。
肩を揺すってみる。
「んー………」
起きない……。
「起きないと遅刻するよ」
いつもどうやって蒼空を起こしてるのか夕に聞いておけばよかった。
「おーきーろー」
耳元で大きな声を出してみる。
「これでも起きない………なんで」
「苦労してるみたいだな」
突然真の声がして振り返ると、ドアに腕を組んでもたれかかる真がいた。
「この人どうやったら起きるの」
「さあな。あ、ちゅーでもしてやれば?」
「はい?」
そんなことできるか。
「夕はいつも蒼空にキスして起こしてるらしいけど?」
え?
それって…………ぼーいずらぶ?
う、嘘だ。
衝撃的すぎて動揺が隠せない。
「え、え………本当に?」
「試しにやってみれば?」
試しに、でできるようなことじゃない。
でもこのまま苦戦し続けたら私は遅刻してしまう。
かといって蒼空を置いていくのは可哀想だ。
他に起こす方法があれば・・・。
もう一度真の方を見てみるものの、不敵な笑みを浮かべるばかりだ。
「早くやれよ」
私は意を決してすることにした。
寸止めすればいいよね。
「うわ、マジでやるんだ…………嘘なんだけどな………」
その言葉は今の私には届かなかった。
ゴクリ…………
少しずつ狭まる距離。
あと数センチ
起きろ、起きろ……!!
「ん?朝………?」
「え?」
ゆっくりと開いた蒼空の目。
私は蒼空が目を覚ましたことで助かった。
ほっとした私は完全に油断していた。
彼は目の前に居るのに私に気づいていない………そして顔は再び近づく。
つまり、起き上がろうとする蒼空。
「おは…………ん」
「っ!?」
唇に当たる暖かい感触。
「マジか……」
これは、最悪の事故だ……………………


