透と出会って一日、その日は空がオレンジ色になるまで遊んでいた。
カードゲーム、ボードゲーム、折り紙、あやとりなど。
とても充実していた。
「あのうさぎさん、かわいい」
不意に、私は棚の上に置いてある、碧色の瞳を持つ白いうさぎに目が行った。
「ん?ああ、あれ、ママからもらったんだ。僕もあれ気にいってるんだよ」
「目、綺麗だね」
「宝石がはめ込まれてるんだって」
「凄いね!」
幼いながらも、その美しさに魅了された。
「良かったら、優那ちゃんに上げるよ。あの瞳、取れるんだって。取ると、ネックレス」
「ううん、いらない。それはとおるくんがお母さんに貰ったものでしょう?だからいらない」
「そっか。……じゃあ、名前を付けてあげて?」
「うーん、とおるくん」
「え?僕の名前?」
何を思ったのか、私はその名を出していた。
「だめ、かな?」
「いいよ!でも、ちょっと恥ずかしいね」
幼い透が頬を赤らめていると、突然部屋の扉が開いた。
「透、小さなお客さんが来てるぞ__________って、女の子!?」
「葵兄ちゃん、今まで何してたんだよ。それに、ここは別荘だし、僕にお客さんなんて」
「丁度、その女の子と同い年くらいの男の子が来てるんだけど……」
「優那ちゃんのお友達?」
そんな人知らない。
「うん、多分×××が来てくれたんだよ!」
また聞こえない。
誰、なの?
そこからの記憶は曖昧だった。
3泊4日の旅行中、毎日透の別荘を訪れていた。
お父さんとお母さんを説得して。
私の隣には知らない男の子。
外でバドミントンをやったり、ちょっとしたパーティーをやったり……
それで転んでけがをしたんだっけ。
泣いた私を負ぶってくれたんだっけ。
その時、うさぎの目を片方取って、私にくれたんだ。
そんな楽しかった日々もあっという間に過ぎて、とうとう帰る日になった。
最後に挨拶をしようと思ったのに、お父さんに急に仕事が入ったと言い、朝早く帰ることになった。
だから、私は手紙と小さな花を書いてお屋敷の玄関に置いた。
ありがとう、楽しかった。
”また会おうね”
と書き残した。
それっきり、その子と会うことはなかった。
事故で記憶をなくし、すっかりそのことも忘れてしまっていた。
そして今、こうしてまた会えた。
奇跡なのか、なにか必然的ななにかなのか。
それは分からない。
ただ、透との記憶を取り戻した私の頬には一粒の涙が伝っていた。


