眠い。
今の私はただただ眠い。
デパートに出掛けてから早一週間、ついにその日がやってきた。
「ふぁ……」
朝早くに起こされ、夏休みに入って乱れていた生活が仇(あだ)となり、電車に乗った今もとてつもなく眠い。
それは皆同じみたいだけど。
二人を除いて。
「寝みぃ……」
「僕も……。真、肩貸して」
「嫌だ、気持ちわりぃ」
「えぇ寄りかかれないじゃん。反対側通路だし……」
「なら向かい側に座れば………って、荷物置いてるのか」
四人席に座ってるもので、余った2人はもう一つの四人席に座っている。
だから、顔は見えないけど、声は聞こえる。
「すぅ……」
隣に座る蒼空は、もう既に寝ていた。
「皆だらしないな」
「そうだぞ〜!」
ん?
一人、多いような……
今更だけど、人数が一人多い。
5人の筈が、6人いるのだ。
「どなた様?」
丁度向かい側に座る、元気そうな人。
見覚えのあるようなないような。
残念ながら、ぱっと見ではわからない。
「っておい、同じクラスだろうが。まさか、俺のこと覚えてないのか!?委員長なのに!?目立つのに!?」
耳がキンとするくらい大きな声に、肩がびくりとはねる。
同じクラスで、委員長……ね。
眠さでなかなか働かない思考を、できるだけ働かせ記憶を遡る。
「あぁ、山田くん」
「ちっがーう!!山城だよ!や、ま、し、ろ!」
「山城くん……って、誰」
「俺だよ、お、れ!」
「ふむ」
元気がいいな。
電車内だというのにここまで騒げるなんて、ある意味非常識人かもしれない。
「山城勇太。一緒に泊まるんで、よろしくな」
それにしても、なんでこの人が一緒に居るのかが不明だ。
「どうしてここに、って顔してるな」
「うん」
「それはな、誘われたからだ」
「誰に」
「凪宮さんに」
私?誘った覚えはないけど。
誘ったのは、女の子だったんだけど。
まぁ、「特別寮の人たちとお泊まりなんて、恐れ多くて行けないわ!」って、次々と断られたんだけど。
女子1人って、心細いし。
結局女子は私1人なんだけど……。
「私、誘ってない」
「うん、誘われてないな。俺の言ったこと、全部嘘だ。ちなみに、凪宮さんたちと泊まるとかも嘘」
あそこまで言っておいて、嘘だと言うのか。
てっきり一緒に泊まったり遊んだりするのかと。
無邪気な顔して笑う山城くんだけど、正直何考えてるのか良くわからない人だと思う。
「凪宮さんたちが行くとこの近くに俺の実家があるんだよ。だからたまたま、一緒に行くだけ。
ちなみに俺ん家、海の家とかもやってるから。良かったら遊びに来てよ。サービスするからさ」
キラン、と効果音が出そうなウインクをかます。
「じゃあ、お昼食べに行く」
美味しいものならなんでもいいけど。
折角なら、彼のお店の売上に貢献してあげよう。
「おう、美味いもん作って待ってるからな」
ああ、眠い。


